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I.はじめに
疾患単位としてはたしてどの範囲のものをてんかんと考えるべきか,現段階でそのような規定を行なう場合に実際の臨床面でどのような示標がどの程度に診断価値をもつているか,このような臨床上もつとも切実な問題が漠然としている現状で,さらにてんかんの境界領域を論じょうとすることは,たとえてんかんに関する上記の問題を明らかにすることが目的であるにしても,かえつて問題の焦点を不明瞭にする可能性がある。そこで初めに,てんかん発作を中心としたてんかんに関する見解をある程度まとめ,そのうえで境界領域との比較検討を行なうことにした。てんかんおよびその境界領域とされている疾患の症状の中で,脳の機能障害として機能局在の立場からもまた興奮過程としても比較的とらえやすく,かつ規定が可能と考えられるのはまずてんかん発作だからである。
その規定は,かつてJackson1)によつて行なわれた,発作の起原はdischarging lesionにあるとの理論的説明が電気生理学的にほぼ実証されたこんにち,「てんかん発作は,脳内に起源を有する発作発射と対応して発現する発作性症状である」としてよいのではなかろうか。
ところでもちろんこの規定は,頭皮上脳波でそのまま事実としてとらえられるものではないし,またとくに臨床上の問題を中心とする場合には,当然発作間歇期における種々の脳波パターンの出現率を,各臨床発作型について検討し,どのようなベターンがどの程度てんかん性異常脳波として診断価値があるかを確かめることが必要である。このような臨床的観点から,発作性異常脳波の診断価値と,それと相関性を示す臨床所見の有無の検討に重点をおいて,てんかんおよびその境界領域,さらに対照例としての神経症における発作性異常脳波の臨床的意義を,さきにのべた順序により考えてみようと思う。
資料は,過去3年間に東大病院神経科外来および病室において診療を受け,かつ安静閉眼時,過呼吸時,およびペンタゾール賦活時にわたつて脳波記録の行なわれた1279例で,疾患の種類と各症例数を第1表に示す。ペンタゾール賦活法は,毎分50mg,総量400mgの緩注法で,閾値の判定は,200mgを境界として低閾値と高閾値に分けた。脳波所見はすべて波型に重点をおいて判定し,正常,非発作性徐波(の優勢なもの),徐波バースト,棘波成分を含む発作性異常波(棘波ないし棘波—徐波結合)に4分した。
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