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I.はじめに
1912年にPhenobarbitalが抗てんかん剤として使用され始めてから,現在までの約半世紀の間に,抗てんかん剤はその種類を増し,われわれ臨床医の治療的要請にこたえてきた。1960年の和田の報告1)によれば,50%以上の発作抑制は,実に83%にのぼつている。しかし一方,和田ものべているように,精神運動発作あるいは混合型は,けいれん型に比してその治療成績が悪く,かつ前者は後者に比して,性格変化あるいは精神障害をより多くともないやすい1)-4)。このようなてんかんは,従来の抗てんかん剤を使用しても,なお十分に発作が抑制されない,いわゆる難治てんかんの中で,もつとも問題となるてんかんということができよう。われわれが,実際患者の診療にさいして,もつとも困惑するのは,このように幾年かにわたつて種々の抗てんかん剤を,いろいろに配合して治療につとめても,なお発作が抑制されない難治てんかんに対して,どのような治療をするかということである。Helferichら5)が初めて合成したN-Aryl-Sultam結合の中から,FriebelおよびSommer6)は抗けいれん作用を示す誘導体が多く存在することを見出し,それらの薬理学的特性を種々明らかにしたが,OspolotもかかるSultam誘導体であり,下記のごとき構造式を有する。本剤のラッテのLD50は500mg/Kg。電気けいれん試験,Cardiasol試験において,相当の抗けいれん効果を示し,なかんづくマウス経口投与において毒性が低く,高い薬用指数を示す7)8)。臨床的には側頭葉てんかん,あるいは精神運動発作型に卓効を有し,しかも副作用が少ないことが強調されており,すでにドイツにおいては1957年ごろより使用され始め,1960年には好結果が報告されている6)9)10)。
今回われわれは吉富製薬バイエル薬品部の好意により,Ospolotを試用する機会をえ,主として難治の精神運動発作型を対象として投与し,好結果をえたのでここに報告する。
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