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Ⅰ.緒言
てんかんの薬物療法は1938年MerrittおよびPutnamによるHydantoin誘導体の発見以来こんにちまで画期的な進歩を遂げている。しかし数々の抗てんかん剤の発見にもかかわらず,なお十分controlできないいわゆる難治性てんかんとよばれるものが約30%はあるのが現状である。したがつて現在てんかんの治療上の関心はこの難治性てんかんに集まつているわけであるが,これらは精神運動発作と混合型発作がその中心をなしている1)。すなわち精神運動発作は他の発作型に比しspecificな薬剤に乏しく,また発作を抑制できても精神症状の増悪をみることがある。一方大発作に著効をあらわすHydantoin誘導体は小発作を増悪させ,小発作に著効を示すOxazolidine誘導体は大発作を増悪させることがあるという両者の関係が知られ,両発作を共有する患者で治療上の困難をしばしば経験するところである。薬理学的にもHydantoin誘導体は動物の電撃ショックにより作られたけいれんに対して強い抵抗力を有し,一方Oxazolidine誘導体はMetrazolけいれんに対して強い抵抗力を有する物質として求められたのであり,臨床成績と相まつて,EverettおよびRichardsは動物の抗Metrazol作用は人間では抗小発作作用を意味し,また電撃けいれんに対して抵抗性が高いということは抗大発作作用を意味すると推論している。
Hydantoin環が開環したPhenacetylurea(Phenurone)はSpielmanにより合成され,動物のMetrazolけいれんおよび電撃けいれんの両者に対して抵抗性を有するという意味で最初のgeneral antiepileptic substanceであった。臨床的には1949年Gibbs,EverettおよびRichardsにより初めてこころみられ,他剤で無効であつた発作,とくに精神運動発作に対して著効を示すことが報告され2)以後数々の追試を受けている。その結果抗てんかん剤としての作用は確認されるところとなつたが,不幸にもこの薬剤に鋭敏で重篤な肝障害や形成不全性貧血で反応し致死的経過をとつたものが報告され,その他精神症状の増悪,胃腸障害,傾眠,発疹,疲労感,頭痛,発熱などの副作用が時にあらわれることがわかつている。
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