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展望
精神分析学の展望(3-Ⅱ)—主として自我心理学の発達をめぐつて
A View of Psycho-analysis, mainly on the Development of Ego-psychology
小此木 啓吾
1
Keigo Okonogi
1
1慶応義塾大学医学部神経科教室
1Neuro-psychiatric Dept., Keio Univ. School of Med.
pp.891-904
発行日 1961年11月15日
Published Date 1961/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200385
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第3部(つづき)
Ⅰ.生命的世界における自我の適応
3.環境に対する自我の自律性――自動性と柔軟性――
8月号でのべたように,Hartmannは,生体organismとしての個体が,環境に対して自己の主体性(能動的維持active maintenance:Haldane)を維持しながら,一貫した独自の時間的発達を営み,一定の適応状態に達する適応過程を,機能的には,葛藤外の自我領域構造論的には,自我装置,発達論的には,その内的成熟に基づく,生体の内的緊張(エス)の圧力からも,外界(環境)の圧力からも独立・自律した自我の自律的発達の概念によつて,自我心理学的に理論づけた。このような自我発達理論は,一定の行動型や精神機能の発達が,後天的な環境の影響から独立した中枢神経系の内的成熟(例:皮質統合corticalization)に基づく可能態readinessの成立を前提としてのみ可能であるという,Andrés Thomas,Ajuriaguerraらの発達神経学の見解,ひいては,個体内に潜在し,顕現して行く生命力élan vitalに関するBergsonの「創造的進化」の見解を神経学の分野に導入したMonakow,Mourgueの時間的局在の概念と関連ずげられ,さらにGesell,Buhlerの発達心理学を経たSpitzらの,乳幼児の母子関係(対象関係)における対象認識能力(自我)の発達の発達神経学的基礎に関する研究によつて,経験的・実証的に追求された。(以上8月号要旨)
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