Japanese
English
研究と報告
心因性頻渇症の1症例についての精神身体医学的考察
A psychosomatic case report of psychogenic polydipsia
金子 仁郎
1
,
辻 悟
1
,
藤井 久和
1
,
坂本 昭三
1
,
小林 進
1
,
清水 将之
1
Z. KANEKO
1
,
S. TSUJI
1
,
H. FUJII
1
,
S. SAKAMOTO
1
,
S. KOBAYASHI
1
,
M. SHIMIZU
1
1大阪大学医学部精神神経科教室
1Department of Neuro-Psychiatry, Osaka University, Medical School
pp.821-829
発行日 1961年10月15日
Published Date 1961/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200376
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
1.1日20lにおよぶ多尿と頻渇・多飲を主訴にした一症例について,身体的諸検査を施行し,尿崩症・糖尿病・慢性腎臓疾患等の器質的疾患との鑑別を行なつてこれを否定し,心因性の頻渇症と診断し,精査した。
2.発症をもたらした心理的要因を患者および家人に対する頻回の面接により,実族歴・生活歴を調査し,あわせてロールシャッハ・テスト・TAT等の心理テストを施行し力動的に考察した。 3.患者は情緒的に未熟・不安定で社会適応の巾の狭い,いわばヒステリー性格者であり,しかも自我統合能力の劣つた個体である。
4.頻渇・多飲は本症例の場合,過去の性的外傷体験を通して,不潔なものを洗い流すといつたsymbolic,magicalな機制によつて,症状が形成され発展したものであると考えられた。
5.強力な精神療法開始後,数ヵ月にして主訴症状は軽快し尿比重も正常範囲内にあるようになつたが,病識はなお不十分であり,現在家人を含めての精神療法を展開中である。
6.本症例は,心理テストでは妄想様思考を発展し易い傾向が認められているが,現在のところ,臨床的観察から精神分裂病を否定し得る状態にある
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.