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分裂病の心理療法に深い経験をもつF. Reichmannの渡米後20余年にわたる論文がほとんどおさめられている。彼女の理論を体系づけた名著"Principles of intensive psychotherapy"(1950)以後,彼女は若干の修正を加えてきたが,その道程もうかがわれる。彼女は意味内容の分析を主とする古典的精神分析からしだいに脱皮しつつ,治療者-病者間の対入関係の力動機制に焦点を向けるSullivanのよき協力者であつたが,さらにそこからも自由に抜け出している境地がみられる。精神分析の伝統のよい面を十分生かしながら,psychoanalysisからpsychoanalytically oriented psychotherapyというふうに移り変わつてゆく。そこには比類のないborn therapistとしての彼女の資質がなだらかなわかりやすい文章の行間ににじみ出ている。いろいろの立場の人がここからいろいろのものをくみとれるであろう。女の人らしいやさしさとともに,正確な表現をもつ理論も欠けてはいないが,彼女のいうように,解釈はいくつも可能なのであつて,いずれが正しいかという問題より,いずれがhelpfulであるかということのほうが問題なのであり,いつていることの立派さ(それ自体も傾聴すべきものが多いが)よりも,行なつたことの立派さに頭が下がるような本である。
5章に分けられ,Ⅰ.On the phliosophy of the problem,Ⅱ.On psychoanalysis and psychotherapy,Ⅲ.On schizophrenia,Ⅳ.On manic-depressive psychosis,Ⅴ.On general psychiatric problems,Ⅵ.Epilogueとなっているが,やはり白眉は分裂病の項と,遺稿On lonelinessなどであろう。
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