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はじめに
精神科領域の特殊療法として,従来からもつとも多く使われてきた電撃療法は,最近Chlorpromazineそのほかの薬物療法に,その席をゆずつたかの感があるが,実地上の効果と簡便さのうえから,いぜんとしておもな治療法の一つとして利用される機会が多い。
電撃療法(以下E. S. と略す)の功罪について論じたものは,すでにきわめて多数あつて枚挙に暇ないが,最近の報告中重要なものとしては,剖見例1)2),自発けいれん例の脳波3),記銘力障害4)5)などを検討したものがあげられる。
ことに頻回のE. S. を施行したためにおこつた自発けいれんについては,公表されたものだけでも相当多i数にのぼつているが6)〜10),未発表のものも推定すると,その例数は莫大な数に達するのではないかと思われる。われわれは従来からE. S. は必要最少限度にとどめるべきであると考えてきた12)が,それでも松沢病院において,最近7年間に18例の自発けいれん例を経験している。第1表に示すように,このうち7例は,他施設から転入院したときすでに,自発けいれんのみられたものである。東京都内外の精神病院を2,3調査したところでは,自発けいれん例発現率は,いずれも松沢病院に比べてかなり高率であつた。
われわれは昭和32年以来,これらの自発けいれんをみた分裂病に対して,臨床的ならびに気脳写や脳波による検討を行なつてきたが,最近対照として,頻回のE. S. はうけたが,自発けいれんのおこらなかつた分裂病を選び,気脳写と脳波描記を行なつたところ,E. S. について,さらに再考を要するような所見をえた。そこで,この気脳写と脳波の所見を検討することによつて,E. S. に対する批判をこころみるべきであると考えた。
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