紹介
—L. Binswanger 著—「精神分裂病」(Schizophrenie)〔第6回〕
東京医科歯科大学神経科教室精神病理学グループ
pp.517-520
発行日 1959年7月15日
Published Date 1959/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200116
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『精神分裂病』の症例研究は前号までで紹介を終つたので,今回は最後に,分裂病の総論的考察ともいうべき本書の「序論」を要約したいと思う。「序論」を最後にまわしたのは,前にも触れたとおり,それが症例研究をまとめて出版する際に(1957年)書き加えられたもので,症例研究からの引用も多く,あとで読むほうが理解しやすいからである。ちなみに,この序論の要旨は,1957年9月2日に,チューリヒで催された第2回国際精神医学会の席上「現存在分析,精神医学,精神分裂病」という題で講演されている。
ここにまとめた分裂病研究は,精神医学の臨床で分裂病と名づけられる現存在形の構造と進行を理解しようとする試みである。まず,5つの症例を選ぶさい条件となつたのは,第1に,自己記述をふくむ生活史と病歴の十分な材料が存在すること,第2に,欠陥状態ではないこと,第3に,精神病の発現に先立つて多少とも《異常行動》の時期が見られること,そして第4に,できるだけ各種の症例を選ぶことだつた。しかし,5例のうち3例までが被害妄想の症例なのは(症例1,4,5),分裂病の問題が妄想,とくに被害妄想において頂点に達すると思われるからである。
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