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アメリカで4ヵ月,カナダで1ヵ月,世界健康組織World Health Organizationのフェロウとしての生活を送つたあとで,2つの学会に参加するために,ワシントンの空港を発つたのはむし暑い8月22日でした。学会の1つは,ウィーンで開かれた第11回国際精神衛生会議,もう1つはスペインのバルセロナで開かれた第4回国際精神療法学会でした。
前者の精神衛生会議については,いつも日本から出席されているので,とくに目新しいこともありませんでしたが,今年は主としてRefugeeの問題を中心に,テーマは“Uprooting and Resettlement”となつておりました。8月24日から29日まで午前中はこのテーマで,特別講演があり,演者はカナダのDr. B. Chisholm,W. H. O. のDr. M. Pfister,アメリカのDr. Erik Erikson,イギリスからDr. J. R. ReesオーストリアのDr. H. StrotzkaとHans Hoff教授などで,今年の会長のHoff教授は連日皆出席で大いにエネルギッシュなところを見せ,Erikson教授の“Identity in Our Time”は,現代人がidentifyする対象を失つた点を強調して,なかなか好評でした。午後は例年通り分科会のdiscussion groupにわかれ,小生は11のグループのうちの第4班“Mental health aspects of family life-separation and reunion”にいれられました。この班討議でもRefugeeの問題がかなり多くでました。問題の日本での開催については,来年度の日本開催が不可能となつたので1959年はパリ,1960年のMental Health Yearは本部のイギリスでエィデンバラ,1961年はまたパリと決まりました。1962年については,次回で決定することになりましたが,W. F. M. H. の会長Dr. Reesは,日本で開きたいといい,会計監査のアメリカのDr. Stevensonはアジアで開きたいといつていました。アジアないし日本で開きたいという意図は全体につよいと思われますが,問題は会員の旅費がかさむ点にあるようでした。第3日目にExecutive Boardの委員選挙があり,11人の候補者が挙げられ4名連記でしたが,各国1票ということで,開票の結果は台湾の林民をはじめ,南アフリカその他の小国ばかりが当選しました。そのほかテーマとは別に,イギリスのDr. H. V. Dicksが“Mental Health in theLight of Ancient Wisdom”という特別講演で,東洋思想ことに禅と西洋思想について話をしましたが,これもなかなか好評でした。
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