Japanese
English
連載 「継往開来」操作的診断の中で見失われがちな,大切な疾病概念や症状の再評価シリーズ
神経症性うつ病
Neurotic Depression
津田 均
1
Hitoshi TSUDA
1
1名古屋大学大学院医学系研究科精神健康医学
1Department of Psychopathology and Psychotherapy, Graduate School of Medicine, Nagoya University, Nagoya, Japan
キーワード:
Neurotic depression
,
Endogenous depression
,
Treatment
Keyword:
Neurotic depression
,
Endogenous depression
,
Treatment
pp.724-726
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102783
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抑うつの基盤の多彩さ
神経症性うつ病の概念を説明するためには,いくつかの前提を確認しなければならない。まず,症状としての「抑うつ」は疾患非特異的であり,ほとんどあらゆる病態に出現する可能性があるということを押えておく。次に,その抑うつに向かう気分の変動にも,心的葛藤のからまりが基盤にあると推測されるものと,内因的,あるいは器質因的な基盤が想定されるものがあるということを確認しておく。後者は,従来の内因性うつ病のみではない。自閉症スペクトラムから統合失調症,さまざまな器質疾患に伴うものに抑うつへの気分変動が生じ得る。また,後者の経過の中に,それに重畳するように,心因的な抑うつが現れることもあり得る。
したがって「抑うつ」自体の基盤はきわめて多彩であるが,その中で主に比較対照されるのが,神経症性うつ病と内因性うつ病である。この2つが分離され得るものであるかどうかは現在でも論争点となっていて,決着はついていない。DSMのような操作診断は,この2つの概念を分離することには実証的根拠がないことを主張して出来上がっているが,これには常に国際的に反論が上がっている。なお,神経症性うつ病が心的レベルで生じるといっても,それは,神経症的な心的葛藤がからんで生じてくる抑うつを指すと考えるべきであって,単なるライフイヴェントに対する一過性の抑うつは,反応性抑うつと診断すべきであろう。
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