Japanese
English
特集 うつ病の早期介入,予防(Ⅰ)
運動はうつ病の改善や予防に寄与するか
How Does Exercise Have the Preventive or Therapeutic Effects on Depression?
邊 坰鎬
1
,
諏訪部 和也
1
,
征矢 英昭
1
Kyeongho BYUN
1
,
Kazuya SUWABE
1
,
Hideaki SOYA
1
1筑波大学大学院人間総合科学研究科体育科学専攻
1Laboratory of Exercise Biochemistry and Neuroendocrinology, Tsukuba University, Tsukuba, Japan
キーワード:
Exercise
,
Antidepressant
,
BDNF
,
Neural plasticity
,
Hippocampus
Keyword:
Exercise
,
Antidepressant
,
BDNF
,
Neural plasticity
,
Hippocampus
pp.671-677
発行日 2014年8月15日
Published Date 2014/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102777
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はじめに
うつ病は,ストレスが主な原因の精神疾患である。うつ病に関する神経科学研究において,最も注目されている脳部位は,海馬と前頭前野である。両部位はともにヒトの高次認知機能を担う重要な脳部位であり,特に海馬は記憶や空間学習能力を司る。海馬は解剖学的に辺縁系の一部として内側側頭葉の大脳皮質の下に位置し,特徴的な層構造を持っている(図1)。最近の研究では,長期間のストレス曝露による慢性的なコルチゾール分泌が,脳由来神経栄養因子(BDNF)の海馬内濃度を低下させることで,神経細胞を破壊,萎縮させることがうつ病の発症機序として明らかになってきた(神経可塑性障害仮説)。運動は,BDNF増加を介して海馬での神経新生を促進し,海馬の構造・機能的改善をすることから,うつ病に対する効果的な非薬物療法として注目を集めている11,12,18,23)。
本稿では,うつ病の治療において,BDNFの役割と脳の可塑性に注目して解説した後,脳フィットネスを高める運動の効果に関して紹介する。続いて,このような効果の背景にある分子基盤は何か,想定されるメカニズムについて外観する。最後に,うつ病の予防や改善のための運動処方としてどのような運動が効果的なのかを現在まで明らかになっているデータから考えてみたい。
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