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統合失調症の精神療法で世界的に有名なスイス,バーゼル大学名誉教授ガエターノ・ベネデッティ(Gaetano Benedetti)教授が2013年12月2日逝去された。享年94歳であった。1920年,イタリア・シシリー島Cataniaで外科医の息子として生まれ,当地の医学校を卒業。精神科医として研修をはじめて間もなく1947年,スイスに移りチューリッヒ大学精神科ブルクヘルツリのマンフレット・ブロイラー教授(Manfred Bleuler)の弟子となる。グスタフ・バリー(Gustav Bally)に教育分析を受ける。1951年アメリカに留学し,ローゼン(John Rosen)の直接分析を見聞する。帰国後,ブロイラー教授の勧めにより統合失調症の精神分析的精神療法に向かった。ベネデッティはスプリッティングを客観的に眺める代わりに,文字通りその中に飛び込みスプリットした世界を対話的関係にもたらそうとする。「隣人と―関係をもって―とどまらねば―ならない」という真っただ中で,患者は「隣人のほうに向けられて―存在する」ことが不可能になっている。しかし,自閉のただ中においても何かに向かおうとする動きがみられる。それに気付くには精神療法的に長くつき合わねばならない。ベネデッティの基本姿勢である。
1953年,チューリッヒおよびローマで教授資格を取得,1956年バーゼル大学精神衛生・精神療法の教授に就任,1985年退任し名誉教授となった。その間,1963年,ミラノ精神分析研究所の設立に参加し,以後もイタリアで活躍した。ドイツ精神分析協会名誉会員,アメリカ精神分析アカデミーのフェローでもあった。1949年結婚,4人の子どもに恵まれる。シシリー島出身であることが大きな誇りであり,家族の結びつきが強かった。1961年脳神経外科手術を受けるが回復,それを契機に神経心理学の本を書いている。20冊を超える著書と500の論文がある。
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