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長い間,国の内外から厳しい批判のあるわが国の精神科医療もここにきて改革の動きが本格化したようである。それは,「精神科医療のあり方を改革すべき」という閣議決定(2010年6月)に基づくものと理解される。それを契機に,3つの団体がそれぞれ「将来ビジョン」を提言している。すなわち,こころの健康政策構想会議(2010年5月)1),日本精神保健福祉政策学会(2012年3月)3),日本精神科病院協会(2012年8月)4)からの提言である。それら提言の内容はそれぞれの団体,立場,性格を反映をあらわして特色があることは当然として,3団体とも現状のわが国の精神科医療の改革の必要性,その具体策として,1)入院中心主義からアウトリーチ(地域医療・地域生活支援)への転換,2)精神病床数の削減,3)家族支援・家族参加の強化,4)人員配置についての「精神科特例」の廃止,さらには医療費の一般診療科との同等化などでは一致する。ただ,日精協提言では多少ニュアンスが違って,「必要な人員配置ができる報酬の設定などが行われなければなりません」と主張されている。
他の2団体の提言の中にはなく,日精協提言の中にある,「どうしても現代の医学では回復できない患者さんがいます。どのような治療や処遇が適しているのかを研究しなくてはなりません」という主張は,筆者にはわが国の統合失調症治療の実践の多くの責任を背負ってきた病院団体の慧眼によると思える。アメリカ精神医学会のリーダーであるLieberman JA(2011)2)は,統合失調症の転帰について,“初回エピソードでは多くの患者は症状の寛解をみる。しかし,やがて再発し,そのたびごとに慢性化して回復は困難になる。結果的に10人に1人は精神病症状を持ち続ける。長期経過は,完全寛解から治療困難な重症の症状と能力障害まで多様性が認められるがその原因は未だ知られていない。疾病病理の広がりと重さとが関係することは確かであろうが,疾病経過に環境要因が関係することも事実である。薬物療法をともに,治療状況とコミュニティの支持,さらには家族の支持がエピソードの転機,長期予後に関連する”と記している。妥当な見解と思われる。
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