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特集 アンチスティグマ活動の新しい転機Ⅰ
総論:わが国におけるアンチスティグマ活動を中心に
Stigma to the People with Mental Illness
高橋 清久
1
,
中西 英一
2
Kiyohisa TAKAHASHI
1
,
Eiichi NAKANISHI
2
1公益財団法人精神・神経科学振興財団
2藍野大学医療保健学部作業療法学科
1Japan Foundation for Neuroscience and Mental Health, Tokyo, Japan
2Department of Occupational Therapy, Aino University
キーワード:
Stigma
,
Discrimination
,
Recovery
,
Inclusion
Keyword:
Stigma
,
Discrimination
,
Recovery
,
Inclusion
pp.929-940
発行日 2013年10月15日
Published Date 2013/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102569
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はじめに
スティグマという言葉の起源は古くはギリシャ時代に奴隷や犯罪者などに,それと分かるように刺青やマークを入れたことが始まりとなり,それらをスティグマと呼んでいた。すなわち,身体に刻印された徴である。それが転じて,烙印,恥辱,汚名,といた意味で使われるようになった。また,無知の状態,すなわち理解していない状態で,ある固定的な先入観を持つとき,ステレオタイプなイメージが生じる。この過程をスティグマ化と呼び,拒否的あるいは否定的なステレオタイプは偏見,差別,排除などにつながる。たとえば,精神障碍者について何も知らない状態で,マスメディアなどにより精神障碍者と犯罪とが関係があるような見方が植え付けられると,人々は一様に精神障碍者は危険なものと考えてしまう。アンチスティグマ活動は,このような偏見,差別,排除に対して正しい知識を提供してステレオタイプ化した考えを適切な理解,態度,行動に変えていくことを目的とした活動である。
精神障碍に対するスティグマの問題は時代や国を超えて,常に大きな課題である。精神障碍者に対するスティグマは精神障碍それ自体よりも,当事者にとって困難な問題であることもよく知られている。またスティグマは一般社会,地域の市民の中だけではなく,当事者自身にも,それを取り巻く家族,精神医療福祉関係者,一般の医療者,保健関係者,行政関係者など,立場の違う多くの人たちの中にも存在している。
本稿ではわが国で精神障碍者に対するスティグマが生じた要因と現状,そして今後のとるべき方向性について論じ,世界精神医学会(WPA)を中心としたアンチスティグマ活動についても概観する。
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