書評
―神庭重信 監・編集―難治性気分障害の治療エビデンスレビュー2013
樋口 輝彦
1
1独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
pp.811
発行日 2013年8月15日
Published Date 2013/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102533
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今日ほど国民の医師に対する評価が厳しい時代はないであろう。「パターナリズム」の時代はすでに過去のものであり,最近は患者さんの「自己決定」あるいは患者と治療者の「治療同盟」が一般的になりつつある。自己決定をするにせよ,治療同盟で治療法を選択するにせよ,十分な情報の提供が求められる。その情報の中には,その医師の長年の「経験」が含まれるが,今日ではその「経験」だけでは情報としての信頼度が確保されない。「経験」のみではA医師の治療方針とB医師のそれとが異なることになり,患者は戸惑うことになる。最近ではセカンドオピニオンのシステムが広がりつつあり,複数の医師の意見をもとに判断するケースが増えてきたのも,このような背景があるからである。
「エビデンスに基づく治療の選択」は何故,その治療法が第一選択なのかがエビデンスをもとに説明されるため,患者さんにとっても判断する材料として有用である。また,治療者にとっても,個人の経験には限界があるため,治療の選択に関する情報は有用である。このことは特に精神科医療に携わって日が浅いレジデントや若手の医師にあてはまる。長く臨床を経験するとエビデンスを基盤にして,経験による個別医療の視点が加えられることは当然であり,しばしば批判される処方のマクドナルド化は避けられるであろう。
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