- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
ハンス・ベルガーによってヒトの脳波が1929年に報告されたが,間欠的な光刺激に対する脳波の研究は,1937年のエイドリアンとマシューズの報告(Brain 57:355-385,1937)が嚆矢とされている。現在では,光刺激は臨床脳波検査においてルーチンの賦活法として世界中で行われている。しかし,ポケモン事件(1997年)で有名になった光・突発波反応と比べると,臨床脳波の判読において光駆動反応は何らかの脳機能変化の傍証として役立つ以外はそれほど重視されることはない。それは,光駆動反応の生理的意味や病態生理が十分に解明されてこなかったためである。光過敏てんかんの研究で世界的に著名な著者は,四半世紀以上にわたり光・突発波反応と光駆動反応の研究に取り組まれてきた。「低輝度視覚刺激で誘発される光駆動反応:アトラス」と訳される本書は,著者のこれまでの研究活動の中でも低輝度・低頻度光刺激による光駆動反応の成果について図譜を中心にまとめたものである。
本書の序文は脳波学の大御所であるニーダーマイヤー博士(ジョンズホプキンス大学名誉教授)が書かれているが,ちなみに,臨床脳波学のバイブルであるニーダーマイヤー博士の教科書の中で,著者は「脳波賦活法」の章を執筆されている。さて,本書の構成は,最初に低輝度の5Hz光刺激を用いるに至った経緯が説明され,その後に視覚生理学の観点から光駆動反応に影響する刺激および固体側の要因に関する基礎的検討の結果が,脳波とともにその頭皮上マッピングも付け加えてわかりやすく示されている。そして最後に,様々な精神・神経障害で認められる光駆動反応の特徴が示され,光駆動反応に影響する諸要因の機序に関する著者の推論も提示されている。
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.