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展望
fMRIからみたニコチン依存症における脳の変化と心の接点
A View from fMRI Findings about Relations between Neurological and Psychological Changes in Nicotine Dependent Patients
磯村 毅
1
,
村井 俊哉
2
Takeshi ISOMURA
1
,
Toshiya MURAI
2
1予防医療研究所
2京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座(精神医学)
1Reset Behavior Research Group, Nagoya, Japan
2Department of Neuropsychiatry, Graduate School of Medicine, Kyoto University
キーワード:
Smoking
,
Nicotine
,
fMRI
,
Ventral striatum
,
Reward
Keyword:
Smoking
,
Nicotine
,
fMRI
,
Ventral striatum
,
Reward
pp.662-671
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102218
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はじめに
2006年度の診療報酬改定において,ニコチン依存症が治療の対象となる病気として位置付けられ,禁煙外来においてニコチンパッチおよび内服薬のバレニクリンの使用が可能となった。これらの薬物により,禁煙開始初期の退薬症状の緩和が可能となり,禁煙外来での禁煙導入成功率(3か月時点)は約6割となった。しかし,治療開始後1年時点での禁煙継続率は約3割であり,再喫煙の多さが課題となっている15)。
この再使用の問題は他の薬物依存症でも共通しており,「依存性薬物は神経にどんな変化を起こすのか,それにより,どの心理的機能にどのような変化が生じ,繰り返しの再使用に至るのか」という点が,依存症研究に共通するテーマとなっている。動物モデルを用いた研究から,依存症への脳内報酬回路の関与が明らかとなり,その詳細を巡っていくつかの有力な仮説が提唱されている19)。動物モデルを用いた研究と並んで重要なのは,実際の依存症患者を対象とした研究であるが,近年ではfMRIをはじめとする機能的神経画像が広く用いられるようになっている。ニコチン依存症についても,実際の喫煙者を対象とした賦活研究が可能となったことから,その病態の理解が深まりつつある。
本稿では,主としてヒトを対象とするfMRIを用いた研究のうち,脳内報酬回路の主要領域の一つである腹側線条体での神経活動に特に注目して最近の知見をまとめ(表1),ニコチンの引き起こす神経学的変化と心理学的変化の接点を探ってみたい。
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