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はじめに
精神科医療には,患者自身の意思によらない入院(非任意入院)が法的に位置づけられているという特色がある。わが国では,1900年の精神病者監護法以降,患者の医療について「監護義務者」,「保護義務者」(1950年),「保護者」(1993年)をそれぞれ規定し,患者自身が意思を表明できない場合は本人に代わって保護者に判断の責任を負わせることにより,同意に基づく医療を担保してきた。しかし,医療や介護について「家族が面倒をみるのは当然」という考えが依然として主流のわが国では,保護者となる患者の家族に過重な負担を生じさせており,制度を見直すことが保護者のために必要であった14)。特に超高齢化社会を迎えた近年は身近に親族のない高齢者が増え,アパートへの入居や(法的には保証人を要しない)入院に際し有償で保証人を請け負う事業者との間でさまざまな消費者トラブルが生じている13)。精神科医療においても今後地域で自立した生活を送る者が増えていくことを想定すると,従来の家族制度に立脚した保護者制度を見直すことが急務と考えられる。
加えて,「障害者は保護の対象ではなく権利の主体であるとの考えに立ち,障害当事者の経験に即した視点から」自己決定に基づく医療を進めるためにも,精神科医療における保護者制度について,現状をふまえつつ本人主体の観点からあるべき姿を検討することが求められる。内閣府「障がい者制度改革推進会議総合福祉部会 医療・合同作業チーム(医療分野)」は,このほど障害者基本法改正に関連して,基本法に盛り込むべき内容の1つとして「医療保護入院に係る同意を含む「保護者制度」を解消するための根拠となる規定を設けること」を提案している。
それでは,わが国の保護者制度は今後どのようにあるべきか。保護者制度を論じるために本稿では,海外では一定の条件下で保護者の役割がどのように規定されているか,具体的な場面として精神科の非任意入院を設定して関連する情報を収集した。各国の一般的な医療事情については,外務省が公表している「世界の医療事情 在外公館医務官情報」(http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html)を参考にした。なお,本稿記載の国に加えて複数の国における精神科医療に関する情報は,成書12)および当センター内に開設された「精神保健医療福祉の改革ビジョン」ホームページ(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/overseas.html)に掲載されているのであわせてご参照いただきたい。
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