書評
―Henry J. Jackson,Patrick D. McGorry 編,水野雅文,鈴木道雄,岩田仲生 監訳―早期精神病の診断と治療
樋口 輝彦
1
1国立精神・神経医療研究センター
pp.1036
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101723
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臨床病期モデルを採用した早期精神病治療の良書
本書は1999年に刊行され,わが国では2001年に邦訳された「精神疾患の早期発見・早期治療」(金剛出版)の改訂版「Recognition and Management of Early Psychosis:A Preventive Approach」の日本語版(邦訳タイトル「早期精神病の診断と治療」)である。編集は初版と同じく,Henry J. Jackson教授とPatrick D. McGorry教授によるものであるが,その執筆者はほとんど入れ替わっており,この領域の研究の進歩がいかに早いかを実感させる。
本書は8部で構成されている。第1部(第1章,第2章)は導入部であるが,この中で早期精神病の予防と介入にとってきわめて重要なモデル,すなわち「臨床病期モデル」が詳しく解説されており,まず,この部分を十分理解することが,本書全体の理解の前提になる。第2部(第3~5章)では,精神病のリスクと脆弱性に関する幅広く重要な分野が検討されている。第3章は精神病の遺伝研究分野の最新知見を概観し,第4章では精神病の環境的危険因子と遺伝要因の相互作用がレビューされている。また第5章では早期精神病を対象にした神経生物学的研究が概観されている。
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