Japanese
English
展望
非定型うつ病―不安障害との併発をめぐって
Atypical Depression:In regard to the comorbidity with anxiety disorders
貝谷 久宣
1
Hisanobu KAIYA
1
1医療法人和楽会パニック障害研究センター
1Warakukai Medical Corporation, Panic Disorder Research Center, Tokyo, Japan
キーワード:
Atypical Depression
,
Anxiety Disorders
,
Anxious-depressive fit
,
Rejection sensitivity
,
miniPTSD
Keyword:
Atypical Depression
,
Anxiety Disorders
,
Anxious-depressive fit
,
Rejection sensitivity
,
miniPTSD
pp.840-852
発行日 2010年9月15日
Published Date 2010/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101692
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はじめに
パニック障害(PD)の臨床に従事していると,それに伴ううつ病を避けて通ることはできず,その治療には難渋する。PDに伴ううつ病に関する研究を探すと,その頻度については多くの文献が見つかったが30),臨床症状を詳しく記載した論文はそれほど多くなかった。数少ない中でVan Valkenburgら65)は,PDに伴ううつ病は焦燥感が強く,心気症や離人症が多く慢性化の傾向が強い,さらに,治療反応が悪く社会的予後が悪いことを記していたが,治療に関する記載はなかった。その後,ロンドンの聖トーマス病院のWestとDally67)による不安・恐怖症が前駆するうつ病の論文とめぐり会えた。この報告の貴重さは“まず治療ありき”である。この研究は,モノアミン酸化酵素阻害薬(MAOI)が奏効したうつ病群を取り出し,それが従来のうつ病と異なる臨床特徴を持つことを示し,現代の非定型うつ病(AD)概念の端緒を開いた。この論文は,半世紀経た今日,いまだ臨床的価値を失っていない。
本稿ではAD概念成立の経緯をたどり,現代精神医学におけるADの臨床的意義を述べ,最後に筆者のAD成立機序の仮説を提出する。
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