動き
「The 9th International Review of Bipolar Disorderr (IRBD)(ポルトガル・リスボン)」印象記
阿部 又一郎
1,2
1国立精神・神経センター精神保健研究所 精神生理部
2エスキロール病院
pp.1026-1027
発行日 2009年10月15日
Published Date 2009/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101512
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2009年5月6~8日にポルトガルの首都リスボンにおいて双極性障害の国際カンファレンス(The 9th International Review of Bipolar Disorder;IRBD)が開催された。IRBDは,EU圏において双極性障害の臨床に携わる精神医療従事者を対象として,2000年から開催されており,今年9回目となる。昨年11月には,アジア・パシフィック地域においてIRBD Asia 2008が香港で初めて行われた。IRBDの委員会メンバーには,スイスのチューリッヒ・コホート研究で著名なAngst名誉教授や,Akiskal教授を中心とする臨床研究グループのメンバーが多く含まれていることもあり,bipolar spectrum概念の啓発とそれに基づいた双極性障害の早期診断・適切な治療の普及を目的としているのが特徴である。
Bipolar spectrum概念の拡大と,それによる過剰診断傾向にはもちろん議論のあるところだが,うつ病患者の増大とそれによる社会的インパクトが先進諸国に共通する問題となり,双極性が疑われるケースに安易に抗うつ薬を投与することのリスクがしばしば指摘されている精神科臨床(および製薬会社)の現在の動向を反映した動きともいえるだろう。リスボンでは,本大会の始まる前日5日からすでにポルトガル国内の精神科医を対象にbipolar symposiumが開催されていた。こちらは,大会長であったリスボン大学精神科Figueira教授の主催のもと1995年より毎年行われているシンポジウムであり,同時開催されたこの5月初旬はまさに双極性障害週間であった。
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