Japanese
English
特集 疲労と精神障害―ストレス-疲労-精神障害について
疲労の脳内機序
Brain Dysfunction in Fatigue and Chronic Fatigue
渡辺 恭良
1,2
,
田中 雅彰
1,3
,
水野 敬
1
Yasuyoshi WATANABE
1,2
,
Masaaki TANAKA
1,3
,
Kei MIZUNO
1
1大阪市立大学大学院医学研究科システム神経科学
2独立行政法人理化学研究所分子イメージング研究プログラム
3大阪市立大学大学院医学研究科COE生体情報解析学
1Department of Physiology, Osaka City University Graduate School of Medicine, Osaka, Japan
2Molecular Imaging Research Program, Kobe Institute, RIKEN
3Department of Biomarker and Molecular Biophysics, Osaka City University Graduate School of Medicine
キーワード:
Fatigue
,
Chronic fatigue syndrome
,
Brain dysfunction
,
Serotonin transporter
,
PET
Keyword:
Fatigue
,
Chronic fatigue syndrome
,
Brain dysfunction
,
Serotonin transporter
,
PET
pp.527-532
発行日 2008年6月15日
Published Date 2008/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101216
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
めまぐるしく動的である現代社会においては,ほとんどの老若男女が疲れている。疲労・倦怠感は,私たちが日常的に経験している感覚であり,発熱,痛みとともに,身体のホメオスターシス(恒常性)の乱れを知らせる重要なアラーム信号の1つである。疲労は,私たちにとって非常に身近な問題であり,かつ,ストレスの多い現代社会に生きる私たちのなかで慢性疲労に悩む人が多いにもかかわらず,科学的・医学的研究はこれまで断片的であった。ここ数年,生活習慣病をはじめとする多因子疾患の予防医療・予知医療の発展とともに,このような前病気状態(未病ともいわれる)にいかに対処するかという気運が高まり,「疲労の科学」に目が向けられるに至った。
文部科学省・科学技術振興調整費による疲労研究班〔生活者ニーズ対応研究「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」(1999~2004年度,研究代表者:渡辺恭良)〕では,これまでに知られてきた断片的な疲労の分子・神経メカニズムの研究結果を統合し,脳機能イメージングや遺伝子解析などの新しい方法論も取り入れて「疲労」と「疲労回復・予防」についての科学的な研究を進め,2004年夏からは文部科学省の21世紀COEプログラム革新的学術分野に我々大阪市立大学が申請した「疲労克服研究教育拠点の形成」が採択され(拠点リーダー:渡辺恭良),世界に先駆けて疲労研究・研究を通した教育の世界的拠点を形成してきた。現在,本拠点において,疲労の基礎・臨床研究と抗疲労食薬・環境空間開発プロジェクトを進めており,本稿では,現時点の疲労,慢性疲労の脳機能・分子イメージング研究の成果を述べる。
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.