「精神医学」への手紙
ベンゾジアゼピン由来の脳波反応と臨床表出―長期連用と離脱の周辺
細川 清
1
1特定医療法人万成病院
pp.201
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101141
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ベンゾジアゼパムの優れた効用とうらはらに,これまで有用性の陰になっていた,いわば放置されてきた側面に触れ,一般の喚起を促したい。主題は,ベンゾジアゼピン類(Benzodiazepines;BZP)が取り込む脳波反応である。これまで,BZP服用によって,頭皮脳波に特有のベータ波が出現することはよく知られている。この波形の神経生理学的機序は明らかではない。BZPは,現在まで,一般名で約20種類に近い製剤が承認されている。そのすべてに速波が取り込まれるかどうかは調査していないが,ジアゼパムをはじめ,ほとんどのBZPにおいて観察される。
BZPは現在,精神科における抗不安薬を越えて,次第に他科臨床において,患者の要求もあり不眠などにその使用が拡大され,慢性長期に連用されているケースも多い。BZPは,抗不安,鎮静,順化,筋弛緩,抗けいれん作用を持つが,一方,逆アゴニスト作用3)が解明され,不安惹起,けいれん誘発作用などが少なからず知られるようになっている。また,離脱症候群は古くから知られている。筆者は長く臨床脳波の部門に携ってきたが,多剤高用量の向精神薬の中にBZPを服用している患者の脳波に,時として,高振幅150μVを超え,アルファ帯域にも及ぶ,15~20Hzの速波が延々と展開するのをみてきた。この脳波展開と臨床表出には解離があり,見かけ上変化がない場合が多い。筆者は,ロフラゼプ酸エチル由来の発作性高振幅ベータ波の群発に一致して亜昏迷状態の臨床表出のみられた症例を報告した1)。
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