Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
障害者の生活を支える所得保障の制度として障害年金の果たす役割は大きい。しかしながら,国民年金法は法制定当初(1959年),障害の範囲を視覚障害・聴力障害・平衡機能障害・咀嚼機能障害・音声言語機能障害・肢体不自由の,いわゆる外部障害に限定していた7)。1964年の改正で,結核性疾患による病状障害と換気機能障害,非結核性疾病による呼吸器の機能障害および精神の障害(いわゆる内部障害)が対象となったが,この経緯は後々にも年金受給要件に精神の障害を有する者が受給困難となりやすい問題を残していると指摘されてきた。
その1つは,すでに議論されている9)。初診日の保険料納付要件は,病識を持ちにくく病状の重い時期に社会関係から孤立しがちな精神疾患の実態に即していない,ということである。
他の問題としては,障害程度の認定基準が,精神の障害について的確に評価することができるものではないことが挙げられる。初診日の保険料納付要件を満たしていても,必ずしも障害の程度にふさわしい保障が得られるとは限らない。診断書の記載では障害に該当しないと判断され年金が不支給となったり,現実に障害の状態が深刻な者が低い等級にしか認定されない例を日常的に散見する。
そこで本稿では,年金の請求について筆者が関与した25例の診断書記載内容と実際に認定された障害程度について検討し,その問題性を指摘することとする。
25例の診断書は検討のための諸条件整備のためかなり過去のものであるが,見出された問題点は今日でもなお克服されていない。これらの問題点について関心を持ち,個々の事例に応じて是正に向けた問いかけを繰り返していくことが年金制度の適正な運用を促進するうえで必要であると考え,参考のために25例以外の最近の再審査請求事例を併せて報告する。
Copyright © 2007, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.