巻頭言
精神状態像の基礎構造
臺 弘
1
1坂本医院
pp.992-993
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101077
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筆者が「精神医学」誌に巻頭言を書くのは3回目である。初めは本誌35巻4号(1993)で精神科の3治療(精神・生物・生活療法)を,次の41巻3号(1999)には症状論と機能論の統合を述べた。筆者の臨床の原点は都立松澤病院であるが,群馬大学で江熊要一と共著の「精神科外来診療の手引」(1966)を発表した頃から生活臨床に収斂し,東京大学を経て診療所の外来で地域医療にかかわって今日に至っている。今回は精神科医療の実践の原点が「精神状態像の基礎構造」にかかわるという月並みな意見を自己流に語らせていただく。
言うまでもないことながら,精神症状の理解には相手の主観的内容を広い共感をもって了解し説明できることが目指される。それには客観的観察・判断で得られた状態像の理解と生活歴,環境状況,家族・遺伝歴を総合した判断が必要である。医療が患者の障害の改善・回復を目指し「生活の価値」QOLを高める目標を持つからには,所見の真実の立証と内容の整合も求めねばならない。この作業は受動的な診る・聴くだけでなく,能動的に問いや試み・課題への働きかけ・治療や生活への参加を促し,さらに神経・生物学的な諸検査の裏付けも必要となる。「問い」は「求め」である。ここでは簡易客観指標が重要となる。
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