巻頭言
精神鑑定を卒後研修に活かす
中谷 陽二
1
1筑波大学社会医学系精神衛生学
pp.344-345
発行日 2003年4月15日
Published Date 2003/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100871
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裁判官との会話で決まって聞かされるのは鑑定人を探す苦労である。大都市圏ではそれほどでないが,それ以外では頼める人が限られ,再鑑定ともなると遠隔地に求めることが珍しくないという。筆者も北海道,沖縄の地方裁判所から委託を受けたことがあるが,当然,地理的な制約のため種々困難が伴う。
筆者が一昨年に行った全国の精神科医を対象とするアンケート調査では興味深い結果が得られた。回答者の約6割は刑事精神鑑定の経験をまったく持たず,鑑定実施はごく少数の人に集中していた。鑑定を依頼された場合に「引き受けない」と答えた人が44%で,理由としては,「手間がかかるから」と並んで,「専門家ではないから」「方法がわからないから」という知識の不足をあげる人が多かった。半数近くの人に卒後研修での鑑定の学習経験がなく,60歳以下の世代で明らかに経験率が低かった。鑑定が必要なことはわかるが,自分がいざ依頼されると,知識と経験がないため二の足を踏むというわけである。実際,7割近くの人が,鑑定を卒後研修に「もっと取り入れるべきだ」と回答した。
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