「精神医学」への手紙
SSRIによる性機能障害について―「抗うつ薬の功罪―SSRI論争と訴訟」を読んで
井貫 正彦
1,2
1君津中央病院精神科
2木更津病院
pp.922-924
発行日 2006年8月15日
Published Date 2006/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100798
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本誌2006年2月号の書評に紹介されたこの本は,SSRIにより自殺のリスクが増加するという副作用が黙殺され,その後訴訟に発展した薬害事件の経緯を詳述している。以前,厚生省(現厚生労働省)に勤務していたとき,薬害エイズ事件を経験した筆者にとって,震撼とさせる非常にショッキングな内容であった。筆者もまた,書評者同様,著者,監修者,訳者の勇気に拍手を送りたい。これに触発され,筆者はparoxetineによる性機能障害について取り上げたいと考えた。後述する通り,決して頻度は低くはなく,深刻な副作用であると考えられるにもかかわらず,日本ではあまり注目されず,製薬企業は添付文書で十分な注意喚起を行っていないのみならず,この副作用に対する製薬企業の対応には理解に苦しむ点があるからだ。
筆者は,挙児希望を契機に,paroxetineによる射精遅延に気づいた,パニック障害の30歳代男性患者の症例を経験した。本症例ではparoxetine 20mg/日を使用していたが,射精遅延に気づいたためfluvoxamine 50mg/日に置換したところ,速やかに症状は消失した。
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