書評
産業メンタルヘルスの実際
中村 純
1
1産業医科大学精神医学教室
pp.926
発行日 2006年8月15日
Published Date 2006/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100799
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私が産業医科大学に赴任した時,当大学の評議員をされていた西園昌久 福岡大学名誉教授から,産業医教育にはリエゾン精神医学の知識と経験を活かすことが重要だとのお言葉をいただいた。私が産業医科大学に赴任した1998年から現在まで連続8年間,バブル崩壊後の不況や産業構造の変化など多くの複合的要因からわが国の自殺者は3万人を超えており,産業医にはメンタルヘルスの不調者への対応が必須となっており,産業医教育の責任を感じているところである。企業で働く人の自殺者は交通事故による死亡者数とほぼ同数であり,特に産業医学分野でのうつ病の早期発見・早期介入,復職への支援は重要な課題である。そこで,産業医にはより精緻な精神医学の知識や対応能力が必要である。保坂教授も精神科医として総合病院でのリエゾン・コンサルテーションサービスを実践された経験から,精神科医と一般医療機関の医師との連携(リエゾン)の重要性を認識されており,産業医活動をリエゾン精神医学の実践の場と考えられたと思われる。
本書では精神医学の知識が産業医にもわかりやすく解説されている。産業医の多くは精神科以外の医師であり,精神医学の知識を整理することは重要である。さらに本書では上司のメンタルヘルスへの理解,対応,休職から復職に至るまでの過程での産業医のかかわり方,精神科医としての産業医活動の役割などについても解説されている。
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