オピニオン 認知症のBPSDに非定型抗精神病薬を使用すべきか否か
BPSDに対する非定型抗精神病薬の使用をめぐって
池田 学
1
1愛媛大学大学院医学系脳とこころの医学
pp.1165-1167
発行日 2006年11月15日
Published Date 2006/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100348
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はじめに
認知症の行動異常ないし精神症状は,患者本人を苦しめるだけでなく介護者の介護負担を増大させ,入院や入所の時期を早める直接的な原因となる点で重要である。従来から認知症の症状は,認知症の病態の中核をなす認知機能障害を中心とする中核症状と,そこから二次的に派生してくる精神症状,行動異常,不眠,失禁といった周辺症状あるいは随伴症状に分類されてきた。後者は,周囲からみて迷惑である,あるいは問題であるというニュアンスで問題行動などと呼ばれることもあった。
ところが,レビー小体型認知症(DLB)における幻視や前頭側頭葉変性症(FTLD)における常同・強迫行動のように,認知機能障害と並んで,あるいはむしろ,認知機能障害よりも病態の本質にかかわっている可能性のある精神症状や行動異常の存在が注目されるようになってきた4)。また,これらの症状は介護者の側からみれば問題のある行動であっても,患者にとっては目的のある行動であったり,そこには何らかの誘因があるはずであると解釈する考え方も普及してきた6)。そのような背景の中で,これらの症状は国際老年精神医学会でBehavioral and psychological symptoms of dementia(BPSD)「認知症の行動および心理症状」と呼ぶことが提唱され,改めて注目を集めるようになってきている。
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