「精神医学」への手紙
非定型抗精神病薬とエネルギー平衡の崩れ
岸 敏郎
1
1島根大学解剖学講座神経形態学
pp.690
発行日 2005年6月15日
Published Date 2005/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100836
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本誌47巻1号に掲載された安宅らによる論文「Olanzapine服用患者における体重変化,耐糖能および脂質代謝の検討」に関連する知見を加えたい。そこで考察されているように,セロトニン情報伝達系,とくに5-HT2c受容体を介するものは重要と思われ,その根拠は5-HT2c受容体欠損マウスが示す過食と肥満である1)。抗肥満ホルモン,レプチンについては,その血中濃度が高まるにもかかわらずなぜ肥満するか,すなわちレプチン抵抗性の解明が待たれる。また,5-HT2c受容体を有するレプチン反応性メラノコルチン産生ニューロンが視床下部弓状核に局在する1)。中枢神経系に広く分布するメラノコルチン4受容体(MC4-R;melanocortin-4 receptor)はエネルギー平衡調節を担う2)。たとえば,MC4-R欠損マウスは肥満,過食,耐糖能障害を来し,欧米肥満人口の3~5%にMC4-R遺伝子異常がみられる2)。以上から,レプチン・セロトニン作動性メラノコルチン神経系の解析は,安宅らが論じた非定型抗精神病薬による有害事象の克服に寄与すると考えられる。
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