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第13回日本精神科救急学会総会が2005年10月14,15日に浜松市のアクトシティ浜松にて,浜松医科大学精神神経科教授 森則夫大会長のもと開催された。参加者は精神科医師192名,精神保健福祉士や看護師など160名の計352名であり,精神科救急の発展を支える多くの人たちが参加していたことがうかがえる。一般演題は口演12題,ポスター20題であったが,元々,日本精神科救急学会では地域の救急システムや症例に関する報告が多く,本大会においてもそうであり,活発な質疑応答がなされていた。また本大会ではポスターセッションを設けており,発表者とじっくり討議できている印象であった。今年から施行された,いわゆる「医療観察法」に関する発表も散見し,精神科救急のこの法へのかかわり方を考えていく必要性が感じられた。ところで本大会では新しく教育研修コース(今回は「電気刺激療法の進歩と実際」)が設けられた。精神科救急システムの発展とともに医療技術の発展も必須であり,教育研修コースはまさにタイムリーな試みと思われた。
さて,この総会のテーマは「精神科救急は日本の精神科医療を変えられるか」であった。計見一雄理事長が「精神科救急の守備範囲,今とこれから―どこまで需要が増大するか?」と題した特別講演(理事長講演)をされ,境界性人格障害について触れておられた。また,シンポジウムIIでは「高齢者の精神科救急―身体管理を含めて」そしてミニシンポジウムでは「薬物関連精神障害に対する治療的対応」が取り上げられた。近年,人格障害や認知症に伴う行動障害で精神科救急を受診する患者さんが増加しており,まさに精神科救急の守備範囲を考えるのに重要なテーマと思われた。さらに新規物質を含む薬物乱用が拡大しているが,急性精神病状態で受診することも多く治療的対応についての知識を得ることは精神科救急では重要であり,興味深いミニシンポジウムであった。また,シンポジウムIにおいて「精神科救急システムを再考する」が討議された。守備範囲とシステムの再考を通して精神科医療を担っていくエネルギーが感じられる内容であった。
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