動き
「第28回日本精神病理・精神療法学会」印象記
野間 俊一
1
1京都大学医学部精神科神経科
pp.104-105
発行日 2006年1月15日
Published Date 2006/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100198
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日本精神病理・精神療法学会第28回大会が,2005年10月6,7日の2日間にわたって,中安信夫(東京大学)会長のもと,東京都渋谷区の津田ホールにて開催された。穏やかな天候に恵まれ,両日とも多数の参加者で賑わった。会場は千駄ヶ谷駅前に位置するモダンで落ち着いた佇まいの施設で,当初中安会長はA会場の立派なメインホールに比してB・C会場である小会議室の手狭さを気にされていたが,実際始まってみるとつねに満席の小会議室での質疑応答は内容の濃い熱気に満ちたものとなった。
今回の大会は,学会名が「日本精神病理学会」から「日本精神病理・精神療法学会」へと変更されてはじめての記念すべき大会である。寡聞にして学会名変更の経緯は知らないが,この間“精神病理学の危機”がつねに話題になってきたこと,精神病理学的議論がややもすると難解な,思弁に陥りやすく臨床からの乖離が危惧されてきたこと,などの事情が背景にあるものと思われる。しかしながら,記述派にせよ人間学派にせよ,精神病理学は本来治療論とは独立して発展してきた学問的手法であり,精神療法という視点の導入は議論を拡散してしまわないか,などの懸念から,新学会名を戸惑いをもって迎えた学会員も少なくないのではなかろうか。実は筆者もそのひとりである。そのため,例年以上の期待感と緊張感をもって大会に臨ませていただいた。
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