Japanese
English
綜説
医療経済と慢性呼吸器疾患
Medical Economics and Chronic Respiratory Disease
高橋 龍太郎
1
Ryutaro Takahashi
1
1東京都老人総合研究所ヘルスケア部門
1Department of Nursing and Health Care, Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology
pp.687-695
発行日 2002年7月15日
Published Date 2002/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902501
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シュトックハウゼン事件—総論にかえて
ドイツの作曲家シュトックハウゼン氏がニューヨークの世界貿易センタービル事件への感想を求められ「あれはアートの最大の作品です」と答えたため演奏会やマスコミの取材が次々キャンセルされた事件を取り上げて中沢新一は次のように述べている.「今日では両義的に思考したり,両義的な意味を発言したりすることが,極度に危険な行為となっている」「ジャーナリズムにとっては,豊かさと危うさをはらんだ両義的思考こそは,最大の餌食であり敵なのである」(新潮 2002年1月号).
昨年私たちを震憾させた同時多発テロ事件は次の事件へと波及していった.医療経済とは直接関係がないように思える同時多発テロ事件は,シュトックハウゼン事件に至るとその基底において医療経済と深い関係があるのではないだろうか.それは,圧倒的に一方の側にいるのが当たり前の状況で少数派の意義をも認めうるような思考の両義性の問題である.医療経済では,病に悩む人々に公平に医療を提供すること(公平性)と限られた医療資源の限定的提供(差別化)という両義性である.大多数の人々はこれらの両者を受け入れることができるかもしれない.少なくとも,想像の上ではどちらももっともであると思えるだろう.しかし,当事者にとっては大問題である.特に大きな影響を受けるのは生活の困窮に直面している低所得者と障害者である.
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