Japanese
English
Bedside Teaching
赤ワインと冠循環予備能
Effect of Red Wine on Coronary Flow Velocity Reserve
島田 健永
1
,
吉川 純一
1
Kenei Shimada
1
,
Junichi Yoshikawa
1
1大阪市立大学大学院循環器病態内科学
1Department of Cardiology Medicine, Osaka City University Medical School
pp.1207-1212
発行日 2001年12月15日
Published Date 2001/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902395
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アルコール摂取と虚血性心疾患
アルコール摂取と虚血性心疾患の発生率の間には負の相関関係があることが多くの疫学的調査から明らかにされている1).しかしながら,過度のアルコール摂取は高血圧を生じ逆に虚血性心疾患の発生率を上昇させる2).全くアルコールを摂取しない人と比べて適度なアルコール摂取(グラス2〜3杯/日)は明らかに心臓病の死亡率と発生率を減少させる.このような関係はJ型またはU型カーブとして知られている.アルコールのなかでも特にワインがよいとされている歴史は今に始まったことではない.1819年に,アイルランドの内科医であるSamuel Blackはフランスや地中海沿岸諸国の人々と比較してアイルランド人にかなりの冠状動脈の閉塞が多いことを解剖において確認している3).
1979年にSt.Legerらは,ヨーロッパ18ヵ国でアルコール摂取と虚血性心疾患の発生率の間には強い負の相関関係があり,特にワインが関係していると報告した4).1991年に,アメリカの有名なテレビ番組でフランス人はアメリカ人の3倍も脂肪を摂取しているのに虚血性心疾患の発生率は3分の1であることが報告された.このテレビ報道以降,これらの事実がいわゆる“フレンチパラドックス”として知られるようになった.この事実の解釈として,フランス人はあまりミルクを飲まないとか,ニンニクやチーズ,野菜をアメリカ人やイギリス人と比べて多く摂取するなどが考えられたが,最も関係があると考えられたのが赤ワインの消費量であった5)(図1).
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