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高齢者に対する心臓手術をめぐる最近1年間の話題
高齢者人口の増加と社会問題化は心臓外科手術にも大きな問題を投げ掛けている.最近1年間でも多くの高齢者の心臓手術に関する論文発表があった.かつて多数みられた高齢者でも手術可能であったというタイプの論文から,現実にはかなり選択された患者が手術の対象となっているが,実際の手術成績を検討し,高齢であることが手術の危険率を増加させるのかという正統な論文がみられるようになって来た1,2).再手術,動脈硬化などの合併症患者についての検討も高齢者を対象として行われるようになっている.
次に,最近の高齢者に関係の深い話題はなんといっても低侵襲手術である体外循環非使用下の冠動脈バイパス術(OPCAB)であろう.左小開胸による左前下行枝への1本バイパス(MIDCAB)の導入は非体外循環下に冠動脈バイパス(CABG)を行うことが決して困難なことではないと広く一般の心臓外科医に知らしめた3,4).しかし,左前下行枝への1本バイパス適応となる患者は決して多くなく,MIDCABといえどもPTCAなどのInterventionに比べると侵襲は大きいため,次第に低侵襲冠動脈バイパス術の主力は多枝バイパス,完全血行再建が可能なOPCABへ移行して行った.MIDCABとInterventionを順次に行うhybrid revascularisationの報告もみられるが5,6),胸骨正中切開にリスクが多いと考えられる開存グラフトのある再CABGや骨髄腫など以外では美容上のメリットしかないと考えている.したがって,一度に完全血行再建が望めるOPCABを凌駕するとは考えにくい.OPCABへの移行は,吻合部位を固定するスタビライザーの普及により一段と加速され,体外循環に危険を伴うケースでのみ選択されるのではなく,体外循環による補助が必要と考えられないケースで一般的に行われるようになって来ている7〜10).このような状況を背景に,手術侵襲の軽減と大動脈の動脈硬化性病変に伴う体外循環合併症の減少は高齢者を対象とするCABGの適応を拡大している.
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