巻頭言
在宅人工呼吸療法をめぐって
末次 勸
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1藤田保健衛生大学医学部呼吸器・アレルギー内科
pp.429
発行日 1998年5月15日
Published Date 1998/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901683
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わが国の在宅人工呼吸療法(home mechanicalventilation, HMV)は先進国としては大変遅れていたが,1990年4月に保険適用がようやく開始され,その後適用範囲と診療報酬点数の改訂が重ねられ,採算性の点で厳しさがまだ残っているが,なんとかレンタル制の導入が可能な段階に達し,全国レベルで普及しようとしている。全国のHMV症例の総数は,ここ数年急速に増加してきており,現在1,000例以上のHMVが全国で行われているとされる。
HMVの対象となる疾患は,成人の神経筋疾患,呼吸器疾患,および小児疾患に大別できるが,最も多いのは神経筋疾患である。しかし,どのような症例を在宅へ移行させるべきか,その基準はまだ明確に決められていない。さらに,気管切開を施さずに,鼻マスクで陽圧人工呼吸を行う方法も導入され,いわゆる非侵襲的陽圧人工呼吸法(non-invasive positive pressure ventilation,NIPPV)として新たに登場し,在宅への移行しやすさや経費面の有利さもあってHMVの普及がさらに進む状況にある。また.HMVとは区別すべきであるが,閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する鼻CPAP療法の応用が一般化してきて,HMVに準ずる治療法として行われるようになった。人工換気関連の機器を在宅で使用する症例がますます増加するものと予想される。
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