巻頭言
肺と心
白土 邦男
1
1東北大学医学部第一内科
pp.1119
発行日 1996年11月15日
Published Date 1996/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901360
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呼吸と循環,この言葉は機能までも意味し,肺と心よりは広い意味を持っているように響く.この呼吸と循環の根源を肺と心と考えると,この両者が大変密接な関係にあることは周知の事実である.まず,肺と心の両者は,胸郭によって形成される一つの空間,すなわち胸腔内に位置する.このことから,呼吸運動によって変化する胸腔内圧の変化を肺と心は同時に受けることとなる.胸腔内圧の変化は,肺においては容積の変化をもたらすが,同時に肺血管抵抗の変化を伴う.心にとっては前負荷,後負荷の変化が生じる.例えば,呼気時の胸腔内圧の低下は,右心系への静脈還流を増して容積の増加をもたらす.数拍後には肺循環を介してこの影響が左心系にも及び,左心系の静脈還流の増大と容積の増加が生じる.
この時,右心系と左心系を結ぶのは肺血管床であり,心内に短絡路でもない限り,右室から拍出された血液は必ずこの肺血管床を通過しなければならない運命にある.この結果,肺はガス交換の場として効率良く働くこととなる.このように右心系,肺,左心系が直列に配列した血液の通路であることは,この通路の一部分に障害が生じた場合,その前後にも影響が及ぶことは必然である.
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