Topics Respiration & Circulation
テオフィリン薬の現状
近藤 哲理
1
1東海大学医学部内科II
pp.321-322
発行日 1996年3月15日
Published Date 1996/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901223
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■最近の動向 テオフィリンは100年の歴史を有する気管支拡張薬であるが,有効かつ安全な血中濃度域が狭い故に使用しにくい薬剤とみなされ,気管支拡張剤としての評価は低下しつつある.1980年代にテオフィリンは呼吸筋疲労の改善作用を有することが報告され,慢性呼吸不全の治療薬として期待が持たれた.しかし,果たして安全血中濃度域で臨床的効果が得られるか否かの論争は尽きず,呼吸不全患者の治療に繁用されているにもかかわらず,本剤の臨床的有用性の証明には実験設定のさらなる工夫が必要である.テオフィリンは呼吸中枢の刺激作用をも有し,呼吸調節研究の立場からも関心が寄せられている.本剤の呼吸刺激作用の機序は不明であるが,中枢でのphosphodiesterase阻害作用やadenosineレセプターの遮断などが知られている.本剤の呼吸刺激作用を睡眠時無呼吸症候群の治療へ応用することも試みられているが,対象症例や臨床効果については議論の一致をみていない.気管支喘息治療に関しては,上に述べた理由から,多くのガイドラインでは重症喘息にのみ,血中濃度を厳密に測定しながら気管支拡張剤として使用することを奨めている.一方,テオフィリンには気管支拡張作用の他に抗炎症作用が存在することが最近明らかにされており,この作用は濃度依存性ではあるものの,気管支拡張剤としてより低濃度で効果が得られる.したがって,本剤の低用量は喘息治療においてレリーバーとコントローラーの両作用を有する薬剤として,ステロイド吸入などに補助的に使用する可能性が存在し,気管支喘息治療薬としての再評価を受けている.
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