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特集 冠血管再狭窄と平滑筋増殖
カルポニンと平滑筋の増殖,遊走—冠動脈再狭窄に対する遺伝子治療への応用
Calponin and Coronary Restenosis
高橋 克仁
1
Katsuhito Takahashi
1
1大阪府立成人病センター第1内科
1Department of Medicine, Center for Adult Diseases, Osaka
pp.225-231
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901016
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はじめに
カルポニンは平滑筋細胞のアクチン,トロポミオシン結合蛋白質として1986年筆者らによってはじめて単離,命名され1〜3),その生化学的諸性質と一次構造が明らかにされた4〜12).最近,大阪府立成人病センターの筆者らの研究グループは,ヒトカルポニン遺伝子を血管壁局所にリポソームとともに導入し,発現させることにより,バルーン損傷後の血管平滑筋の増殖と遊走を抑制し得ることを明らかにした13〜15).
1989年に,ミシガン大学のNabelらと,MIT,ホワイトヘッド研究所のMulliganらによって血管壁局所に遺伝子DNAを導入して発現させる方法が報告されてから16,17),血管内皮および平滑筋細胞を標的にした血管壁遺伝子治療の可能性が検討されてきた.これまでに米国を中心に,アデノウイルス,レトロウイルス,リポソームとプラスミドDNAをベクターとして用いて,β-galactosidaseやluciferaseなどの標識遺伝子を血管壁構成細胞へ導入する方法が発表されている.単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV-tk)18,19)やNO合成酵素遺伝子,レチノブラストーマ(Rb)遺伝子の導入20)によってinvivoで血管内膜肥厚を抑制し得ることが報告された.また,ラット頸動脈の内膜剥離モデルでは,アンチセンスオリゴDNAを血管平滑筋細胞内に導入して,平滑筋の細胞周期の進行に必要なc-myb,c-myc,PCNA,cdc 2およびcdk 2キナーゼ遺伝子のmRNA合成を抑制することが血管内膜肥厚の抑制に有効であることも明らかにされている21〜26).
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