巻頭言
血管壁と血液の接点
中川 雅夫
1
1京都府立医科大学第二内科学教室
pp.107
発行日 1992年2月15日
Published Date 1992/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900417
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血管系は全身諸臓器あるいは組織に隈なくはりめぐらされており,血液の輸送のみならず循環器としての機能を営んでいる.ことに血管壁の最内腔に位置する内皮細胞は,常に血液と接しており活発な代謝を営んでいる.この血管内皮細胞は血液関門として機能しているのみならず,物質の選択的透過性の機能を有し,また種々の生理活性物質の産生を介して抗血栓性の発現あるいは血管緊張性の維持などの機能を営んでおり,生体の恒常性維持に果たす役割は大きいものと考えられる.従来よりこれらの血管内皮細胞の機能については多方面から詳細に検討されており,血管系の中でも種々の疾患の発症進展に占める内皮細胞の役割は大きいことが認識されている.
血液と血管壁との接点としての内皮細胞は常に種々の刺激に曝されていると考えられるが,内皮細胞の傷害によって発症する直接的な病的機転としては血栓症あるいは動脈硬化があげられる.その発症機序としては内皮細胞に傷害をもたらす要因の存在を起点として,血小板のみならず血液凝固,線溶系の作動が中心となることは周知のことである.近年,血管内皮細胞における血液凝固制御機構が注目を集めており,抗血栓面としての機能は,血栓形成に防御機転として機能している一方,血管内皮細胞の傷害時においては修復機転として血栓原性の作用をも演じている.
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