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最近の肺高血圧症治療のついての最近の全般的な話題
肺高血圧症(pulmonary hypertension;PH)は希少難治性疾患であるが,病態への理解,治療の進歩が急速に進んでいる.そのなかで近年の肺高血圧症治療において現実的に治療が大きく変えつつあるブレイクスルーが2つある.一つは肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension;PAH)に対する治療戦略の一つであるupfront combination therapyの予後改善効果がエビデンスとして証明されつつあることである.以前PAHは治療薬がなく,予後の不良な疾患であった.PHの最終的な目標としては予後改善である.しかし肺高血圧治療薬登場後エポプロステノール静注薬以外の薬では6分間歩行などの運動耐容能の改善などのパラメーターが治験などでのサロゲートマーカーとして使用されていた.これらの肺高血圧治療薬の本当の意味での予後改善のための使用法が模索されてきた.かつては単剤から治療を開始し治療ゴールに達しない場合に併用薬を追加するという治療を行っていたがそれでは十分な効果を得ることができなかった.しかしより早期に積極的に併用療法を行う究極的な治療法としてupfront combination therapyという考え方が登場してきており,国内では既に行われておりその良好な効果は分かっていたが,海外での報告が出始めておりヨーロッパでは2015年のガイドラインの改定において治療にupfront combination therapyが組み込まれている.このPAHに対してのupfront combination therapyはこの後の項で詳しく述べる.2つ目は慢性血栓性PAHにおける肺動脈バルーン拡張術である1〜3).過去には症例ベースで国内,国外で古くから有効性に関しての経験はありその後ボストンのグループより2001年に18例の治療報告4)があったがやはり肺水腫などの合併症により普及することはなかった.その後わが国では手技の工夫により安全に行えることが判明しその効果と安全性に関して確立してきている.現在では国際的に注目を集め海外での治療が広がってきている.上記以外で現在注目されているPAHの治療であるが,一つはメカニズムに対する根本的な治療である.根本的にはまだ解決してはいないが,その一つとして特発性・家族性PAHで発見された遺伝子変異であるBMPR2変異5,6)から研究が進んだBMPシグナルへの病態への理解が進んでおり,このシグナルに対する治療が研究されている.スタンフォードのグループがBMPシグナルのupregulationを示す既存の免疫抑制剤薬がPAHのラットモデルでPHを改善している報告7)があり,その実用化を目指した治験も行われている.さらに英国ケンブリッジグループがBMP9刺激にてラットモデルではあるがSugen-Hypoxiaラットモデルで完成した肺高血圧をBMP9が血行動態と病理学的にも改善させたことを報告している8).これらの治療が正しいかはまだ分からないが,そうであったとしても実用化にはもう少し時間がかかるが,少なくとも今後BMPシグナルへの介入は根本的な治療としての方向性として研究が進むと考えられる.また薬物治療以外では中国のグループから肺動脈徐神経術の報告9,10)が出てきており血行動態と運動耐容能の改善が示されているが,今後の報告が待たれる.
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