書評
—古川哲史 著—そうだったのか!臨床に役立つ心臓の発生・再生
福田 恵一
1
1慶應義塾大学循環器内科
pp.107
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205891
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心臓は,心筋細胞とこれを栄養している血管,血液の逆流を防ぐ弁からできている筋肉の袋状の組織であり,しかもほとんど癌が存在しない臓器です.ですから,臨床的に心臓病を理解することは簡単そうですが,実際にはそうではありません.これは,心臓という臓器が一見単純な構造に思われますが,生体の生存にとって最も重要な臓器であることから高い機能が求められ,実は最大限に機能を発揮するための複雑な構造をとっていることに起因しています.
心臓がなぜこのような複雑な形態と機能を有するようになったかは,下等生物から高等生物になるにしたがって心臓の形態が複雑に進化したかを辿ることによって理解できます.ショウジョウバエのような下等生物では全身循環は開放血管系となっており,その中心部分の血管が拍動することで血液の循環を保っています.これに比して,魚類では全身循環は閉鎖血管系が出来上がると同時に1心房1心室が形成され,心房と心室の機能がはじめて分かれることになります.両生類では肺ができることにより2心房1心室となり,全身循環と肺循環が分離し始めます.爬虫類では完全に陸上生活をすることから肺循環の重要性が増し2心房2心室になりかけますが,まだ心室中隔に交流部分があり,完全ではありません.哺乳類になってはじめて完全な2心房2心室になるわけです.
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