巻頭言
成人となった先天性心疾患の診療とその将来
丹羽 公一郎
1
1聖路加国際病院
pp.5
発行日 2016年1月15日
Published Date 2016/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205874
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先天性心疾患は成人循環器疾患の1分野となっている.中等症から複雑先天性心疾患は,小児期に心臓血管手術を行うが,根治手術ではなく定期的な経過観察が必要な修復手術である.成人先天性心疾患(ACHD)は,年齢とともに,心機能悪化,不整脈,突然死,再手術など心血管系に関する問題を生じる.妊娠,出産,就業,保険,心理的社会的問題などの問題も重要である.この分野は,ACHDを専門に診る医師,看護師を中心とし,循環器内科医,小児循環器科医,心臓血管外科医や各分野の専門医などチーム医療体制を確立する必要がある.日本では1990年代後半の成人先天性心疾患研究会(現在は学会)の発足と同時にACHD診療施設が設立された.ACHDは,成人循環器疾患とは異なる管理方法,診療体制が必要である.2012年に,ACHD診療を行う循環器内科施設グループ「ACHD循環器内科ネットワーク」が立ち上がり,現在,33施設を超える循環器内科が,ACHDの診療を開始している.
日本成人先天性心疾患学会は,学術集会の教育講演,ACHDセミナーを定期的に開き,若手医師,医療従事者の教育に力を入れている.ACHD学会が独自に学術集会を開いているのは日本だけである.日本循環器学会学術委員会に成人先天性心疾患部会が,日本心臓病学会にもACHD設立準備委員会が設けられた.今後は日本成人先天性心疾患学会を中心として,関連各学会,ACHD循環器内科ネットワーク,厚生労働省研究班とともに,ACHD診療への循環器科医の参加と診療体制の確立が進むと予想される.
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