巻頭言
ガラパゴス—ガラPCI
小林 欣夫
1
1千葉大学大学院医学研究院循環器内科学
pp.5
発行日 2015年1月15日
Published Date 2015/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205606
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ガラパゴスと聞き何を思い出すだろうか.ガラ携だろうか.ガラパゴス諸島は太平洋に浮かぶ南海の孤島で動植物が独自の進化を遂げてきた.ガラパゴスリクイグアナなど固有種が多く,ダーウィンが進化論のヒントを得た島としても有名である.
日本は,経皮的冠動脈形成術(PCI)の世界においてガラパゴスである.PCIが独自の進化を遂げてきた.世界的に有名な固有種(インターベンショナリスト)も多数存在する.複雑病変に対して,積極的にPCIが施行され,良い成績がおさめられている.慢性完全閉塞病変(CTO)はそのうちの一つであり,CTOに対する特殊デバイスが開発され,多くのテクニックが考案されてきた.アメリカにおいては,カテ室を1時間使用するだけで10万円以上のコストが要求される.かかったコストを保険会社に請求するが,通常のコストよりも高い時は割り引いて支払われることがある.複雑なCTO病変に対するPCIでは長時間の手技となることも多く,満額支払われないのであれば,病院経営的には非効率的なCTOに対するPCIはせずに,短時間で終了するPCIを多数例行ったほうが良いと考えられる.そのような患者は冠動脈バイパス術に回せば良いのである.一方,日本では匠の技を磨くことが好まれ,非常に難しいCTO病変があると何時間でもかけてこれを成功するまで粘り強くPCIを行っている.このような状況からCTOに対するPCIの技術は日本において非常に発展し,その卓越した技術は世界的に評価され,著名なインターベンショナリストは世界各地に招待され,その技術を披露している.
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