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はじめに
"いわゆる心臓神経症"という題で総説をとの依頼を受けた。このような依頼を受けた一つの理由は,1987年より,厚生省循環器病研究委託"いわゆる心臓神経症の診断基準並びに治療薬薬効評価法の確立に関する研究"が発足し,著者がその主任研究者に指名されているからであると思う。私自身は心臓神経症の専門家ではないので,適当な人選ではないと思うが,"いわゆ心臓神経症"が,なぜ今になって本邦で見直されるようになったのか,その経緯に関係した一人としての意見を述べ,その責任を果たしたいと思う。
上田・武内編集の「内科学」1987年版に神経循環無力症の項があり,"不安初経症のうちで心臓の症状が前面に出たものを神経循環無力症という。心臓神経症(ca—rdiac neurosis),不安定神経症(anxiety neurosis),血管調節失調症(vasoregulatory disharmony)などともいわれる"とある1)。また1987年版,宮本・水島編集「今日の内科学」の索引をみると,心臓神経症・神経循環無力症があり,神経循環無力症は"循環器系愁訴(動悸,頻脈,呼吸異常,胸痛,胸部不快感,めまいなど)を訴えるも,原因となる器質的異常がみあたらない場合を称する。本症と心臓神経症,DaCosta症候群などとの異同が問題となっており,若干の差異がみられるものの,日常臨床上は,同一疾患と考えてよい"とある2)。また同書心身症の項に循環器系として,心臓神経症がその一つとしてあげられている3)。石川恭三編「新心臓病学」第二版1986年には心臓神経症の項があり,"心臓神経症は心臓症状を前景に示す神経症をいう。その基盤として不安神経症が存在することが最も多い"。とある4)。このようにしてみると心臓神経症・神経循環無力症の診断名は,今日なお,本邦においては使用されているものと考えられる。
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