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はじめに
近年,高齢者層の増加、家庭・社会環境の変化等の社会構造の変化に加えて、医療技術の高度な進歩および医薬品の激増等による医原性の因子により細菌感染症が少しずつ修飾されつつある1)。このような状況のなかで,細菌感染症成立に関与する病原(微生物)因子、宿主因子およびこれらをとりまく環境因子の3大リスク因子もまた同様に変貌しつつある2)。最近問題になっている細菌感染症として、例えば,環境因子の変動により全身性あるいは局所性に宿主因子の変化したCompromisedhosts「免疫その他の宿主抵抗機能の低下した宿主」3)においてよくみられる,通常健康成人を冒すことのないOpportunistic pathogen (平素無毒菌)によるOppor—tunistic infection (日和見感染症)の成立がある。特にOpportunistic infectionとしての呼吸器感染症(肺炎)が増加しており.急性の転帰をとることが多い4)。
近年細菌感染症の成立機序について多種類の菌種と宿主細胞を用いて研究されており,少しずつそのナゾが解明されてきている。なかでも,細菌感染症成立の第1段階としての細菌と宿主細胞との接着,つまりBacterialadherence (細菌性接着)の機序と感染成立の関係についての報告5,6)が最も注口に値する。本邦においても1987年7刀に始めてBacterial adherence研究会がもたれるようになって,各方面で研究が行われつつある4)。そこで本稿では、呼吸器感染症の成立における細菌性接着をとりあげ,細菌と宿主細胞の間の指向性(Tropism)および特異性(Specificity)について,また細菌性接着に影響を与える因子やModulatorについて,そしてCompromised hostsにおける細菌性接着の特殊性について綜説する。
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