巻頭言
心疾患根治手術
川島 康生
1
1大阪大学第1外科
pp.1151
発行日 1978年12月15日
Published Date 1978/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404203281
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心臓外科における根治手術とは一体何であろうか。癌の手術の場合は癌が再発しなければ一応根治といえよう。しかし心疾患の外科は機能外科であり,従ってその障碍が残存したり,新たな障碍が発生したのでは根治手術の名に値しないのではなかろうか。
人工心肺装置の開発により開心術の安全性が著しく向上し,今日ほとんどの先天性心奇形が所謂根治手術の対象とされるに至った。この根治手術という言葉は姑息手術に対する言葉として広く用いられているが,果してそのすべてが根治手術といえるだろうか。三尖弁閉鎖症に対する右心房動脈吻合術の如きは,それ以上根治的な方法がない,あるいは少なくも動静脈血が完全に分離されるといった見地から,機能的根治手術といった苦しい表現が用いられている。しかしこれが解剖学的にも生理学的にも根治手術から程遠い事は明らかであろう。
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