増刊号 診断基準とその使い方
I.循環器
8.うっ血性心不全
田村 勤
1
,
宮下 英夫
1
1帝京大学医学部・第2内科
pp.1698-1701
発行日 1988年9月30日
Published Date 1988/9/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402221864
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心臓に種々の負荷がかかったり,心機能が低下すると一時的に心拍出量は低下するが,やがて代償機転が働き,心拍出量は全身の必要量に復帰する.この代償機転が破綻すると,全身への送血量は減少し,心臓の上流である肺または全身にうっ血をきたすことになる.この状態をうっ血性心不全と一般に定義している.これまでの成書にはこのようなうっ血性心不全の定義については記載されてはいるが,診断基準についての記載はあまりみられない.ただ,NYHAのCriteriaCommitteeが心不全の診断基準について提唱しているのみである.この診断基準は左心不全と右心不全に分けて述べられており,それを表1,2に示す.しかし,この診断基準とても日常の臨床の場では必ずしも使われてはいないのが現状である.
このように心不全の診断基準についてあまりとりあげられることがないことの理由の最大のものは,心不全をどの時点からそう呼ぶかということについて必ずしも統一されていないということにある.正常の心機能のもとで,全身が必要とする量の血液を送ることができる状態が正常心と定義でき,この状態からはずれた状態は広い意味で心不全といえる.左室機能が低下するとStarlingの法則が働き,左室拡張期圧が上昇するかまたは拡張期容量が増加して心拍出量を正常に保とうとする.この状態は心拍出量からみると,正常といえるが,左室拡張期圧の上昇や拡張期容量の増加という異常状態を伴っている.
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