巻頭言
血流測定について思うこと
本田 西男
1
1浜松医科大学内科学第一講座
pp.467
発行日 1976年6月15日
Published Date 1976/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202906
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近年,血流測定法の開発に伴う循環生理学の進歩には著しいものがある。新しい測定技術の導入により,それまで予想だにされなかった新知見が生みだされていることは,まぎれもない事実である。しかし,その反面,せっかくの優れた測定法がときに正しく活用されていないのではないかと思うこともなくはない。内外の研究報告に接して,時どき痛感することの一つは,測定法の原理,測定上の必要条件を十分に知りつくした上で実験を行い,データの解釈がなされたのだろうか,あるいは,この研究目的には他の方法を用いた方がよいのではないかということである。
多くの血流測定法には,それぞれに測定上の原理,前提条件があることはいうまでもない。この初歩的なことをしっかり念頭に入れておかないと,思わぬ"誤った新知見"が得られ,報告されることもありえないことではない。腎内局所血流量を測定する目的で開発されたanti-GBM antibody techniqueのように,測定上の前提となる仮定が数年もたたぬうちに否定される浮目をみることもある。温度測定による血流観測でも,その原理または測定上の前提条件を無視して,誤った活用がなされていることも絶無ではない。たとえば,ある至適条件下を除けば,皮膚温は必ずしも皮膚血流の忠実な指標とはならない。
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