ベクトル心電図講座・4
心筋硬塞
石川 恭三
1
1杏林大・内科
pp.517-521
発行日 1974年4月10日
Published Date 1974/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402205398
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心電図上での心筋硬塞(Myocardial infarction)の診断は,主として定性的なパターン認識に基づいて行なわれることが多いので,定性的な診断に強いベクトル心電図が最もその偉力を発揮できるわけです.スカラー心電図上では,小さな結節か,あるいは全くnoiseと鑑別できないような細かい棘のようなものが,ベクトル心電図のQRSループ上では,明らかに心筋硬塞により惹起された異常所見を示すことがあり,その診断に大いに役立つことが多々あります.今回は,前壁中隔硬塞と側壁硬塞について述べ,後下壁硬塞は次号にゆずることにいたします.
心筋硬塞は,冠動脈の閉塞により,その支配下にある心筋が,そこからの血液供給が途絶されて壊死に陥るために生じるものです.心筋硬塞は,その広がりの程度により,貫壁性心筋硬塞(Transmural myocardial infarction),心内膜下硬塞(Sub-endocardial myocardial infarction)ならびに心外膜下硬塞(Sub-epicardial myocardial infarction)とに大別できます.ここでは,貫壁性心筋硬塞についてお話することにします.
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